どのように偽りの記憶がつくられるのか。 – TEDトーク「記憶のフィクション性」紹介。

NHK「スーパープレゼンテーション」で放送されたTEDトーク厳選まとめ

という記事が目にとまったのでご紹介。紹介されているトークの中でも特に興味を惹かれたのは、エリザベス・ロフタス博士による「記憶のフィクション性」(The fiction of memory)。虚偽記憶についてのプレゼン。

なぜ僕がこのプレゼンに惹かれたかというと、最近見た映画『白ゆき姫殺人事件』のテーマとリンクしていたから。この映画では警察の捜査の「外」の話だったけど、記憶が容易に変わったり誘導されたりすることは冤罪事件の要因にもなっているだろう。もしいつか裁判員に選ばれることがあったら……その時に備えて勉強しておきたいなあと思う。

下のリンクからどうぞ。

Elizabeth Loftus: How reliable is your memory? | TED Talk | TED.com

※17分36秒の動画。再生をはじめてから、右下の「Subtitles」をクリックして「Japanese」を選ぶと、日本語字幕が表示される。


NHK「スーパープレゼンテーション」

数多あるTEDのプレゼンから選りすぐりを紹介してくれる番組。伊藤穰一さんや吹石一恵さんのコメントもあり。TEDのサイトでも無料で1700本以上のプレゼン(日本語字幕付きも多数)を見ることができるけど、こうやって選んでくれるのもありがたい。


自分の記憶に騙されるという実例いろいろ。日本の冤罪事件も取り上げている。ロフタス博士自身の記憶についてのエピソード(p.142)も紹介されている。


人の夢に侵入して偽の記憶を植え付ける話。夢の中の夢の中の夢の中の……。面白かった。


筒井康隆原作を今敏がアニメーション映画化。これも夢に侵入する話。筒井さんはテレビで、『インセプション』は『パプリカ』のパクリや、と言っていた……

自分の中の冒険心を確かめよう! – 映画『LIFE!』感想。

映画『LIFE!』鑑賞。

photo by Amazon.co.jp

決断が苦手だ。もともと優柔不断な性格。会社勤めを始めた頃は、ビジネスは即断即実行が大事などと教わってきたけど、あまり身についてない。数百円のシェービングジェルを買うときも迷うし、たまの外食でもメニュー選びは遅い方だと思う。

年を取ったり、体調崩したりすると、ますます慎重で保守的な思考になってきたかも。独身の僕は背負うものは少ないはずだけど、無難な方を選択しがちな人生になってきたかな……

この映画の主人公ウォルター・ミティは、地味で冴えない妄想癖ありの中年独身男性。その境遇についつい自分を重ね合わせてしまう。でも、彼がほんのワンクリックするような小さな決断を重ねていくうちに、人生に動きが生まれ、ストーリーは心地よく展開して繋がっていく。

少し笑えて、少し勇気がもらえ、旅したくなる。劇中カメラマンがカメラを構えてからの、その先の行動に心打たれた。自分の目で見よう。中年の僕の中にも、冒険したい気持ちがまだ残っていることに気づかされた。

この春映画館に行くなら是非観るべき。共感度合いは人それぞれだろうけど、爽やかな感動があるはず。こども連れでお出かけなら、こどもたちはドラえもんとかディズニーとかのスクリーンに放り込んで、大人は『LIFE!』を観よう!

世界を見よう、危険でも立ち向かおう。それが人生の目的だから

映画「LIFE!」オフィシャルサイト

(2014-05-23追記)
Amazonでブルーレイ、DVDが予約できるようになったのでリンク。

(2014-06-30追記)
iTunes Storeもリンク。AppleTVとか持ってる人はどうぞ。

LIFE!/ライフ (字幕版)

LIFE!/ライフ (字幕版)

  • ベン・スティラー
  • ドラマ
  • ¥1000

記憶の捏造と情報の拡散。何をつぶやけばいい? – 映画『白ゆき姫殺人事件』感想。

映画『白ゆき姫殺人事件』鑑賞。

photo by Amazon.co.jp

殺人事件を扱ったサスペンスだが、事件を捜査する警察官が真犯人を追うストーリー……ではない。登場するのは、事件を伝えるテレビのワイドショーや、情報を拡散するツイッターのつぶやき。そして生々しい人間関係が描かれていく。本当にうんざりするくらい。でも、とても引き込まれるスリリングな展開で見応えがある。おすすめ。

この作品から感じたテーマのひとつは記憶の捏造。取材される「関係者」が次々と証言するが、語る人の視点が変わるたびに見聞きした出来事や人物像は食い違いをみせる。まるで黒澤明の映画『羅生門』を思わせる展開。観客は翻弄され、真相は藪の中……ではなく、徐々に核心に迫っていく。

記憶はウソをつく。同じ出来事を見ても人により記憶は容易に捏造されたり、自分の都合のよい解釈をしたりするらしい。心理学者による実験などもあるようで。厄介なことに、本人には悪意がなくても嘘の記憶がつくられることがある。

人々の頭の中でつくられた現実。事実と想像がごちゃ混ぜになって憶測で話す人と、それを聞いて編集してストーリーをつくり伝える人と、それを見聞きして無責任な憶測や感想をつぶやいて拡散する人。恐ろしいのは、犯人がこの構造を利用できてしまうこと。ひとりの人間が追い詰められていく様は「大きな力」を思い知らされる。

もうひとつのテーマは情報の拡散。日常でSNSを使う僕たちは「無関係」でいられない。善意の発信であっても時に人を傷付ける。あるいは標的は自分になるかもしれない。一旦広がってしまった情報は元に戻せない。「マスコミの闇」「ネットの闇」の恐怖は確かに存在する。

しかし、個人的な意見としては、マスコミやネットの役割には肯定的だ。多くの人に情報を分かりやすく伝えることができたり、ささいな意見や感情を発信・受信できたりする手段があることは素晴らしい。結局メディアも道具なので、いかに上手く使うかということ。使う人間の持つ善意も悪意もひっくるめて受け入れたい。

情報の拡散については、MITメディアラボ助教のスプツニ子さんが雑誌『クーリエ ジャポン2014年5月号』の連載で興味深いことを書いていた。 曰く、世界のバイラル(クチコミ)には3つの大きなエネルギーがあって、それは「ヘイト(憎悪)」「エロ」「ユーモア」だというのだ。

もし自分が情報の発信源になるのなら、ユーモアのエネルギーを使えたらいいなと思う。

Humorの語源はHumanではないか、という見方もあり、実際、ユーモアを解するのは人間だけである。

相手の立場を思いやり、自分と相手を対等の階梯に置いて接する人にしか、ユーモアのセンスは持てないと言われる。相手を見下したり、逆に卑屈になったりする人には、ユーモアの資質が欠けるとみなされる。

悪意に満ちた残酷な世界をつくるのか、ユーモアに溢れた世界をつくるのかは、僕たちの発信次第だ。

さて、本作のキャッチコピーは「ゴシップエンターテイメント」。情報の奔流に身を任せて、楽しめる娯楽映画だ。殺人を扱ってたりドロドロした人間関係だったりで小さなお子様にはおすすめしないが、メディアリテラシーの教材として使えるのではないかと思う。ラストには救いもある。多くの人に観てもらいたいと願う。

「世界中が君の敵になっても……」僕は言ってもらえるかな?

映画『白ゆき姫殺人事件』オフィシャルサイト

(2014-06-30追記)Blu-rayの予約可能になったのでリンク追加。


原作本。


同じ原作者作品の映画化。松たか子の鬼気迫る演技が印象的な傑作。

(2014-06-30追記)iTunes Storeへのリンク追加。

告白

告白

  • 中島 哲也
  • スリラー
  • ¥2000